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主に社会問題について法律的に考えてみる。など。
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将来の日本を担うのは、子供たちです。では、日本の子供たちの現状はどうでしょうか。


1.厚生労働省が2010(平成22)年10月20日、全国民の中で生活に苦しむ人の割合を示す「相対的貧困率」について、経済協力開発機構(OECD)が採用している計算方式で算出した調査結果を発表しました。

(1) その発表によると、「相対的貧困率」は、2007年調査では15.7%でした。全体の貧困率は98年が14.6%、01年が15.3%、04年が14.9%。07年は15.7%と急上昇しており、非正規労働の広がりなどが背景にあるとみられています(2009/10/20 17:18 【共同通信】)。08年のOECD報告では、00年代半ばの日本は14.9%で、加盟30カ国平均の10.6%を上回り、メキシコ、米国などに次ぎ4番目に高かったのです。

そして、子どもの貧困率は、98年は13.4%、01年に14.5%でピークとなり、04年13.7%、07年14.2%だったのです(2009/10/20 17:18 【共同通信】)。そのため、当時、長妻昭厚労相は同日の会見において、「子ども手当などの政策を実行し、数値を改善していきたい」と述べ、同手当を導入した場合に貧困率がどう変化するかの試算も今後公表することを明らかにしています。



(2) ですが、いまや「子どもの貧困」について、目を向けているマスコミや市民はどれほどいるのでしょうか。マスコミは、裕福そうな服装で子どもを抱えた女性に「子ども手当よりも保育等のサービスの充実をしてほしい」と述べる映像を放送するなどして、本当に貧困にあえぐ人たちの意見を事実上封殺していまっているのではないでしょうか。

「反小沢」に執着する菅直人とマスコミは、「小沢問題」などのどうでもいい問題を報道し続けることで、本来早急に解決すべき問題から目を逸らしているという愚鈍な振る舞いをしているのです。子どもの貧困と関連性をもつ「派遣切り・派遣法改正」の問題は、秋葉原での殺傷事件によって一躍、注目を集めましたが、いまやほとんど報道されず、注目されていません。

菅直人は平成23年1月4日午前、首相官邸で年頭記者会見を行い、その中でまた消費税増税を持ち出しています。消費税は、一般的に、低所得者層のほうが高所得者層に比べて消費性向が高いため、相対的に低所得者に対する負担が高くなってしまうのですから(いわゆる逆進性)、菅直人の目論見によれば、より「子どもの貧困」を深刻化させてしまうのです。(病気のため)首相としてやるべきことが分からなくなってしまい、気がふれたとしか思えない行動をしている菅直人は、歯止めがかからなくなっています。

「子どもの貧困」について、東京新聞では平成23年1月1日より、「子ども貧国」との表題で連載記事が始まりました。ブログで注目している方がほとんどいないのは残念ですが、その記事を紹介しておきたいと思います。(1~3回分を見ると、各家庭での子どもの貧困の実態と貧困の原因を示す内容で記事にしているようです。)



2.東京新聞平成23年1月1日付朝刊31面「子ども貧国(1) 第1部 未来が泣いている」

無料塾が救った笑顔 小2の再出発

 小学二年生のみほちゃん(8つ)は、自宅近くにある都営住宅8階の通路に立っていた。昨年の6月中旬。背中に赤いランドセルを背負ったまま、眼下に広がる夕暮れ時の街を見た。生け垣にピンク色の花が咲いていた。

 みほちゃんは入学後まもなく、いじめに遭うようになった。クラスの女の子グループから同級生をいじめるよう強いられて、断ったら自分が標的になった。「母子家庭のくせに、幸せそうな顔をしている」と言われ、授業中に「死ね」と書いたメモを回された。

 「どうしたの、迷子になったの?」。通路でじっと動かないみほちゃんを、通り掛かったおばあさんが見つけ、1階まで送り届けてくれた。その夜、母親の恵子さん(46)とふとんに入ろうとして、みほちゃんは突然、泣き始めた。「今日、死のうと思ったの」

 みほちゃんは生まれた時から、区営住宅で恵子さんと二人暮らしだ。長く体調を崩していた恵子さんは、生活保護を受けてみほちゃんを育ててきた。

 3年ほど前からは隣町の病院で看護補助者として働くようになった。保護費と合わせて月収は20万円前後。節約のため、夕食がおにぎりだけの日が週に二日ある。

 みほちゃんは、一人になるのをおびえるようになった。トイレの中まで恵子さんに付いてくる。夜になると、いじめを思い出して泣く。「どうして、あなたはいじめるの?」。ふとんの上に座り、独り言をつぶやいた。

 学校に相談しても、答えは「いじめは確認できない」。恵子さんは、休職してみほちゃんにかかきりにならざるをえなかった。

 蓄えはない。いつになったら仕事に戻れるのか。どうやったら娘は回復するのか。貧困が焦りを呼び、娘を受け止める心の余裕を奪っていった。「虐待をする人の気持ちが分かった」と恵子さんは言う。

 飲食店がひしめく都内屈指の繁華街の一角に小さな「塾」ができたのは、母子がぎりぎりまで追い詰められた、ちょうどそのころだった。

 塾では、生活保護世帯の子どもらに、弁護士や大学生らが無料で教えている。貧しい家庭の子どもたちは、勉強が苦手でも塾に通えない。進学を断念したり、中退したりして、貧困に…。そんな連鎖を断ち切りたい、と若手弁護士が立ち上げた。

 塾の話を区役所の生活保護係からのお知らせで知って、恵子さんは迷わず、みほちゃんを連れて行った。大げさでなく、わらにもすがる思いだった。

 生徒は7、8人だが、なかなか騒々しかった。「を」の字が読めなくて、国語の教科書を放り出す子もいる。でも、先生たちは子どもを自分の膝の上に抱き上げたりしながら、根気強く教えている。

 子どもたちを見ていて、恵子さんは気がついた。「みんな必死で大人に甘えている」。教室の片隅で、みほちゃんが笑っていた。4ヶ月ぶりの笑顔だった。

 塾に通い始めて3ヶ月。クリスマスを前に、みほちゃんは塾のみんな一人一人にプレゼントを用意した。

 ピンクの毛糸のひもが付いた折り紙のペンダント。真ん中に大きなハートマーク、裏には踊るような字で「いつもありがとう」。

 配る前に、大きな声でみんなに報告した。「学校に通えるようになりました」(文中、写真仮名)

     ◇

 「貧しさに苦しむ子どもたち」。そう聞いても、過去のことか、他の国の話と思われるかもしれない。だが、日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあるとされる。経済大国の実相だ。少子高齢化社会で「宝」とされるはずの子どもたち。この国の未来が今、貧困に蝕(むしば)まれている。その現実を直視したい。」



7人に1人 貧困状態に

 経済協力開発機構(OECD)が2008年に発表した報告では、日本の子どもの貧困率は13.7%で、7人に1人が貧困状態にある。非正規雇用の増加などで、20年前の12%から悪化した。ここでいう貧困とは、4人世帯で年収が254万円、2人世帯で180万円を下回ることで、生活保護基準にほぼ重なる。子どもの貧困は将来、さまざまな社会問題を生み出しかねない。

 さいたま教育文化研究所の白鳥勲さんは「本人がどれだけ努力しても貧困の連鎖を脱するのは難しい。社会が解決する問題だ」と話す。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) 厚生労働省によると、07年の時点で、母子家庭・父子家庭の半数以上は貧困状態にあります。この記事に出ている母子家庭も、同様に貧困状態にあります。この記事の場合は、貧困ゆえにいじめを受けたわけではないのですが、「母子家庭のくせに、幸せそうな顔をしている」と言われていじめに遭うのですから、母子家庭がいじめの原因となっています。いじめの誘いを断るほどの気骨があるのに。

そうしたいじめに遇ったのに、学校側が「いじめは確認できない」との無責任な態度を示したために、子どもの精神状態が悪化し、その結果、母親が休職せざるを得なくなり、それが母親の精神状態を悪化させ、より貧困を悪化させたわけです。

このように、貧困状態に陥る原因は、母子家庭、いじめ、学校側の対応といった複合的な要素から、成り立っていることが分かると思います。


(2) 複合的な要素が原因となって貧困に陥った場合、記事に出ている家庭のように、精神的にも追い詰められていくのですが、複合的な要素が原因であるがゆえに、一部でも取り除けば、幾分かでも回復します。すなわち、「生活保護世帯の子どもらに、弁護士や大学生らが無料で教えている」「塾」が救いの一方法となっているわけです。




3.東京新聞平成23年1月3日付朝刊27面「子ども貧国(2) 第1部 未来が泣いている」

手料理が新生活に光 ママのお弁当

 「なんちゃってチキンライス」。それが、加奈ちゃん(6つ)の好物だった。ケチャップをご飯にかけるだけ。具はなし。母親の久美さん(28)は、食べやすいようにとケチャップに砂糖を混ぜた。

 加奈ちゃんが二つになり、妹が生まれたころ、東海地方の自動車関連工場で派遣社員として働いていた父親が失業した。母子家庭で育ち、虐待された経験のある父親は、自分の妻子に暴力を振るい始めた。久美さん名義で消費者金融から借りてパチスロに通った。

 久美さんが働きに出た。日当が数千円の食品加工工場で日雇い。月収は4、5万円。電気やガスを止められたこともある。「寒いから、みんなで寝よ」。母子が一つの布団で寝た。

 久美さんは「だんなの機嫌と、お金がかからない食事ばかり考えていた」という。夫が家にいる時の夕食は、ごはんにみそ汁と野菜いためなどのおかずが一品。母子だけで取る食事の定番が、甘い甘い「なんちゃってチキンライス」だった。

 加奈ちゃんは、無表情なまま好物を食べた。感情を素直に表すことが苦手な子になっていた。

 「子どもさんに、お弁当を作ってください」。久美さんがわが子のために弁当を作るように言われたのは、1年前のことだった。

 夫の暴力がついに命の危険を感じる域に達し、久美さんは子どもを連れて、「母子生活支援施設」(旧母子寮)に入った。生活に追い詰められた母子のために、国が運営する駆け込み寺だ。

 施設は、母親が働きに出ている間、子どもの面倒をみる。ただし、昼食の用意は母親にしてもらう。子どもの食に責任を持つのが、生活再建の第一歩。そう考えてのことだ。

 「お弁当を見れば、どういう生活をしてきたか分かる」とベテラン職員は言う。コンビニのパンやおにぎり、冷凍食材ばかりを詰めたもの。すさんだ生活の影響を最も受けやすいのが食だ。「入所したばかりの母親はお弁当に彩りなど入れられない」と言う。

 久美さんのお弁当は、生まれて初めて作ったにしては、上出来だった。卵とソーセージでウサギの顔を作り、ご飯にのせた。「みんな喜ぶかな」。新生活に不安定な子どもたちを安心させようとの気遣いを込めた。

 久美さんの母親は料理がうまかった。「母さんのから揚げを作ってみようかな」。お弁当を作るにつれ、貧しさで忘れていた手料理の温かさを思い出していった。

 入所後、しばらくして職員が言った。「加奈ちゃんたち、顔がやさしくなったね」

 加奈ちゃんが通う保育園の遠足の日。久美さんは、にっこりと笑う大きな顔ののりご飯のお弁当を作った。

 「今日のお弁当、なあに。見せてよ」。登園する加奈ちゃんに職員が声をかけた。加奈ちゃんは照れ笑いしながら、お弁当袋をそおっと、さすった。(文中仮名)」



母子家庭9割「生活苦しい」

 働いても働いてもぎりぎりの生活を強いられているのが、123万世帯(2003年調査)いる母子家庭だ。厚生労働省によると、07年の時点で、母子家庭・父子家庭の半数以上は貧困状態にある。現在の生活について「苦しい」と答えた母子家庭は約9割だった。07年国民生活基礎調査では、全世帯の平均総所得は566万円なのに対し、母子世帯は236万円。全国の母子生活支援施設に入所する母親の8割が非正規雇用で、その半数の毎月の就労収入は10万円未満とのデータもある。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この記事では、「東海地方の自動車関連工場で派遣社員として働いていた父親が失業」し、貧困に陥り、その父親が「自分の妻子に暴力を振るい始めた」ことで、家庭内が崩壊しています。「東海地方の自動車関連工場」での「派遣切り」ですから、豊田市に本社を置くトヨタ自動車での「派遣切り」を指していると見るのが通常でしょうが、東海地方には、本田技研工業、三菱自動車、スズキなどの製造拠点があるようなので、必ずしもトヨタ自動車に限らないのでしょう。

妻による就業は、「日当が数千円の食品加工工場で日雇い、月収は4、5万円」ということですから、本来は生活保護を受けるべき家族だったはずです。生活保護の申請をしなかったのか、行政側に申請を拒否されたのかは不明ですが、極度の貧困に陥らずに救済の道ががあったはずだったのです。法律通りの行政対応がありさえすれば。

記事によれば、「全国の母子生活支援施設に入所する母親の8割が非正規雇用で、その半数の毎月の就労収入は10万円未満とのデータもある」わけです。そうなると、記事中の母親が生活保護などの公的扶助を受けていない状態であるのは、普通のことといえそうです。

このように、この記事における家庭が貧困状態に陥った原因は、派遣切り、家庭内暴力、母親の収入の低さ、生活保護を受けていないといった複合的な要素から、成り立っています。


(2) この記事におけるこの家族への救済手段は、 「母子生活支援施設」(旧母子寮)に入ったこと、そして、おそらくは(記事には全く触れていませんが)生活保護を受けたことにあります。貧困に陥ると低収入であるがゆえに、より母親が追い詰められ、生きるための最低限の食事へとなっていきます。「なんちゃってチキンライス」は母親にとっては苦しい生活での苦肉の策であるとはいえ、涙を禁じ得ないところだと思います。

この記事では、「施設は、母親が働きに出ている間、子どもの面倒をみる。ただし、昼食の用意は母親にしてもらう。子どもの食に責任を持つのが、生活再建の第一歩」とありますが、(生活保護などの公的扶助により)以前よりも金銭的な余裕ができたからこそ、できることでしょう。

こうして記事中の母子は、いくらか救済されました。「子どもの貧困」に焦点を当てた記事ですから、これで終わりなのでしょうが、残された父親はどうなったのでしょうか。「派遣切り」の後、就職はできたのでしょうか。生活保護を受けることはできたのでしょうか。母子は救われても、父親は死んでいたということになっていないことを祈りたいものです。



(3) 民主党が政権公約として掲げた「子ども手当」は、母親が非正規雇用で、その半数の毎月の就労収入は10万円未満といった貧困状態ある家族を救済し、「次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するという観点から、子ども手当を実施」しつつあるわけです。ところが、菅直人は、そうした貧困状態への救済となる「子ども手当」を政権公約に掲げた意義を、全く損なうことが明らかな「消費税増税」を企ててしまうのです。

日経新聞は、民主党が政権を奪取した当時から、政権公約の破棄を提案し、朝日新聞も平成23年1月1日付「社説」で、「民主は公約を白紙に」などと「頭がおかしくなった」言動を平気でする始末です。政党が政権公約を提示し、それを信じて有権者がその政党に投票するという、選挙制度の意義や政党政治を破壊するような提言、すなわち憲法違反の提言さえも、日本のメディアは平然としてしまうのです。

裕福な社員ばかりの朝日新聞では、「消費税増税」への批判はもはや皆無となってしまいました。子どもがどんなに貧困であろうとも、貧困ゆえにどんなに悲惨が状況に置かれようとも、事件のネタとして面白おかしく記事にするだけで、子どもの貧困には、日経新聞もちろん朝日新聞にとっても無関心でいるのは、当然というべき態度といえそうです。

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2.東京新聞平成23年1月1日付朝刊31面「子ども貧国(1) 第1部 未来が泣いている」

無料塾が救った笑顔 小2の再出発

 小学二年生のみほちゃん(8つ)は、自宅近くにある都営住宅8階の通路に立っていた。昨年の6月中旬。背中に赤いランドセルを背負ったまま、眼下に広がる夕暮れ時の街を見た。生け垣にピンク色の花が咲いていた。

 みほちゃんは入学後まもなく、いじめに遭うようになった。クラスの女の子グループから同級生をいじめるよう強いられて、断ったら自分が標的になった。「母子家庭のくせに、幸せそうな顔をしている」と言われ、授業中に「死ね」と書いたメモを回された。

 「どうしたの、迷子になったの?」。通路でじっと動かないみほちゃんを、通り掛かったおばあさんが見つけ、1階まで送り届けてくれた。その夜、母親の恵子さん(46)とふとんに入ろうとして、みほちゃんは突然、泣き始めた。「今日、死のうと思ったの」

 みほちゃんは生まれた時から、区営住宅で恵子さんと二人暮らしだ。長く体調を崩していた恵子さんは、生活保護を受けてみほちゃんを育ててきた。

 3年ほど前からは隣町の病院で看護補助者として働くようになった。保護費と合わせて月収は20万円前後。節約のため、夕食がおにぎりだけの日が週に二日ある。

 みほちゃんは、一人になるのをおびえるようになった。トイレの中まで恵子さんに付いてくる。夜になると、いじめを思い出して泣く。「どうして、あなたはいじめるの?」。ふとんの上に座り、独り言をつぶやいた。

 学校に相談しても、答えは「いじめは確認できない」。恵子さんは、休職してみほちゃんにかかきりにならざるをえなかった。

 蓄えはない。いつになったら仕事に戻れるのか。どうやったら娘は回復するのか。貧困が焦りを呼び、娘を受け止める心の余裕を奪っていった。「虐待をする人の気持ちが分かった」と恵子さんは言う。

 飲食店がひしめく都内屈指の繁華街の一角に小さな「塾」ができたのは、母子がぎりぎりまで追い詰められた、ちょうどそのころだった。

 塾では、生活保護世帯の子どもらに、弁護士や大学生らが無料で教えている。貧しい家庭の子どもたちは、勉強が苦手でも塾に通えない。進学を断念したり、中退したりして、貧困に…。そんな連鎖を断ち切りたい、と若手弁護士が立ち上げた。

 塾の話を区役所の生活保護係からのお知らせで知って、恵子さんは迷わず、みほちゃんを連れて行った。大げさでなく、わらにもすがる思いだった。

 生徒は7、8人だが、なかなか騒々しかった。「を」の字が読めなくて、国語の教科書を放り出す子もいる。でも、先生たちは子どもを自分の膝の上に抱き上げたりしながら、根気強く教えている。

 子どもたちを見ていて、恵子さんは気がついた。「みんな必死で大人に甘えている」。教室の片隅で、みほちゃんが笑っていた。4ヶ月ぶりの笑顔だった。

 塾に通い始めて3ヶ月。クリスマスを前に、みほちゃんは塾のみんな一人一人にプレゼントを用意した。

 ピンクの毛糸のひもが付いた折り紙のペンダント。真ん中に大きなハートマーク、裏には踊るような字で「いつもありがとう」。

 配る前に、大きな声でみんなに報告した。「学校に通えるようになりました」(文中、写真仮名)

     ◇

 「貧しさに苦しむ子どもたち」。そう聞いても、過去のことか、他の国の話と思われるかもしれない。だが、日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあるとされる。経済大国の実相だ。少子高齢化社会で「宝」とされるはずの子どもたち。この国の未来が今、貧困に蝕(むしば)まれている。その現実を直視したい。」



7人に1人 貧困状態に

 経済協力開発機構(OECD)が2008年に発表した報告では、日本の子どもの貧困率は13.7%で、7人に1人が貧困状態にある。非正規雇用の増加などで、20年前の12%から悪化した。ここでいう貧困とは、4人世帯で年収が254万円、2人世帯で180万円を下回ることで、生活保護基準にほぼ重なる。子どもの貧困は将来、さまざまな社会問題を生み出しかねない。

 さいたま教育文化研究所の白鳥勲さんは「本人がどれだけ努力しても貧困の連鎖を脱するのは難しい。社会が解決する問題だ」と話す。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) 厚生労働省によると、07年の時点で、母子家庭・父子家庭の半数以上は貧困状態にあります。この記事に出ている母子家庭も、同様に貧困状態にあります。この記事の場合は、貧困ゆえにいじめを受けたわけではないのですが、「母子家庭のくせに、幸せそうな顔をしている」と言われていじめに遭うのですから、母子家庭がいじめの原因となっています。いじめの誘いを断るほどの気骨があるのに。

そうしたいじめに遇ったのに、学校側が「いじめは確認できない」との無責任な態度を示したために、子どもの精神状態が悪化し、その結果、母親が休職せざるを得なくなり、それが母親の精神状態を悪化させ、より貧困を悪化させたわけです。

このように、貧困状態に陥る原因は、母子家庭、いじめ、学校側の対応といった複合的な要素から、成り立っていることが分かると思います。


(2) 複合的な要素が原因となって貧困に陥った場合、記事に出ている家庭のように、精神的にも追い詰められていくのですが、複合的な要素が原因であるがゆえに、一部でも取り除けば、幾分かでも回復します。すなわち、「生活保護世帯の子どもらに、弁護士や大学生らが無料で教えている」「塾」が救いの一方法となっているわけです。




3.東京新聞平成23年1月3日付朝刊27面「子ども貧国(2) 第1部 未来が泣いている」

手料理が新生活に光 ママのお弁当

 「なんちゃってチキンライス」。それが、加奈ちゃん(6つ)の好物だった。ケチャップをご飯にかけるだけ。具はなし。母親の久美さん(28)は、食べやすいようにとケチャップに砂糖を混ぜた。

 加奈ちゃんが二つになり、妹が生まれたころ、東海地方の自動車関連工場で派遣社員として働いていた父親が失業した。母子家庭で育ち、虐待された経験のある父親は、自分の妻子に暴力を振るい始めた。久美さん名義で消費者金融から借りてパチスロに通った。

 久美さんが働きに出た。日当が数千円の食品加工工場で日雇い。月収は4、5万円。電気やガスを止められたこともある。「寒いから、みんなで寝よ」。母子が一つの布団で寝た。

 久美さんは「だんなの機嫌と、お金がかからない食事ばかり考えていた」という。夫が家にいる時の夕食は、ごはんにみそ汁と野菜いためなどのおかずが一品。母子だけで取る食事の定番が、甘い甘い「なんちゃってチキンライス」だった。

 加奈ちゃんは、無表情なまま好物を食べた。感情を素直に表すことが苦手な子になっていた。

 「子どもさんに、お弁当を作ってください」。久美さんがわが子のために弁当を作るように言われたのは、1年前のことだった。

 夫の暴力がついに命の危険を感じる域に達し、久美さんは子どもを連れて、「母子生活支援施設」(旧母子寮)に入った。生活に追い詰められた母子のために、国が運営する駆け込み寺だ。

 施設は、母親が働きに出ている間、子どもの面倒をみる。ただし、昼食の用意は母親にしてもらう。子どもの食に責任を持つのが、生活再建の第一歩。そう考えてのことだ。

 「お弁当を見れば、どういう生活をしてきたか分かる」とベテラン職員は言う。コンビニのパンやおにぎり、冷凍食材ばかりを詰めたもの。すさんだ生活の影響を最も受けやすいのが食だ。「入所したばかりの母親はお弁当に彩りなど入れられない」と言う。

 久美さんのお弁当は、生まれて初めて作ったにしては、上出来だった。卵とソーセージでウサギの顔を作り、ご飯にのせた。「みんな喜ぶかな」。新生活に不安定な子どもたちを安心させようとの気遣いを込めた。

 久美さんの母親は料理がうまかった。「母さんのから揚げを作ってみようかな」。お弁当を作るにつれ、貧しさで忘れていた手料理の温かさを思い出していった。

 入所後、しばらくして職員が言った。「加奈ちゃんたち、顔がやさしくなったね」

 加奈ちゃんが通う保育園の遠足の日。久美さんは、にっこりと笑う大きな顔ののりご飯のお弁当を作った。

 「今日のお弁当、なあに。見せてよ」。登園する加奈ちゃんに職員が声をかけた。加奈ちゃんは照れ笑いしながら、お弁当袋をそおっと、さすった。(文中仮名)」



母子家庭9割「生活苦しい」

 働いても働いてもぎりぎりの生活を強いられているのが、123万世帯(2003年調査)いる母子家庭だ。厚生労働省によると、07年の時点で、母子家庭・父子家庭の半数以上は貧困状態にある。現在の生活について「苦しい」と答えた母子家庭は約9割だった。07年国民生活基礎調査では、全世帯の平均総所得は566万円なのに対し、母子世帯は236万円。全国の母子生活支援施設に入所する母親の8割が非正規雇用で、その半数の毎月の就労収入は10万円未満とのデータもある。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この記事では、「東海地方の自動車関連工場で派遣社員として働いていた父親が失業」し、貧困に陥り、その父親が「自分の妻子に暴力を振るい始めた」ことで、家庭内が崩壊しています。「東海地方の自動車関連工場」での「派遣切り」ですから、豊田市に本社を置くトヨタ自動車での「派遣切り」を指していると見るのが通常でしょうが、東海地方には、本田技研工業、三菱自動車、スズキなどの製造拠点があるようなので、必ずしもトヨタ自動車に限らないのでしょう。

妻による就業は、「日当が数千円の食品加工工場で日雇い、月収は4、5万円」ということですから、本来は生活保護を受けるべき家族だったはずです。生活保護の申請をしなかったのか、行政側に申請を拒否されたのかは不明ですが、極度の貧困に陥らずに救済の道ががあったはずだったのです。法律通りの行政対応がありさえすれば。

記事によれば、「全国の母子生活支援施設に入所する母親の8割が非正規雇用で、その半数の毎月の就労収入は10万円未満とのデータもある」わけです。そうなると、記事中の母親が生活保護などの公的扶助を受けていない状態であるのは、普通のことといえそうです。

このように、この記事における家庭が貧困状態に陥った原因は、派遣切り、家庭内暴力、母親の収入の低さ、生活保護を受けていないといった複合的な要素から、成り立っています。


(2) この記事におけるこの家族への救済手段は、 「母子生活支援施設」(旧母子寮)に入ったこと、そして、おそらくは(記事には全く触れていませんが)生活保護を受けたことにあります。貧困に陥ると低収入であるがゆえに、より母親が追い詰められ、生きるための最低限の食事へとなっていきます。「なんちゃってチキンライス」は母親にとっては苦しい生活での苦肉の策であるとはいえ、涙を禁じ得ないところだと思います。

この記事では、「施設は、母親が働きに出ている間、子どもの面倒をみる。ただし、昼食の用意は母親にしてもらう。子どもの食に責任を持つのが、生活再建の第一歩」とありますが、(生活保護などの公的扶助により)以前よりも金銭的な余裕ができたからこそ、できることでしょう。

こうして記事中の母子は、いくらか救済されました。「子どもの貧困」に焦点を当てた記事ですから、これで終わりなのでしょうが、残された父親はどうなったのでしょうか。「派遣切り」の後、就職はできたのでしょうか。生活保護を受けることはできたのでしょうか。母子は救われても、父親は死んでいたということになっていないことを祈りたいものです。



(3) 民主党が政権公約として掲げた「子ども手当」は、母親が非正規雇用で、その半数の毎月の就労収入は10万円未満といった貧困状態ある家族を救済し、「次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するという観点から、子ども手当を実施」しつつあるわけです。ところが、菅直人は、そうした貧困状態への救済となる「子ども手当」を政権公約に掲げた意義を、全く損なうことが明らかな「消費税増税」を企ててしまうのです。

日経新聞は、民主党が政権を奪取した当時から、政権公約の破棄を提案し、朝日新聞も平成23年1月1日付「社説」で、「民主は公約を白紙に」などと「頭がおかしくなった」言動を平気でする始末です。政党が政権公約を提示し、それを信じて有権者がその政党に投票するという、選挙制度の意義や政党政治を破壊するような提言、すなわち憲法違反の提言さえも、日本のメディアは平然としてしまうのです。

裕福な社員ばかりの朝日新聞では、「消費税増税」への批判はもはや皆無となってしまいました。子どもがどんなに貧困であろうとも、貧困ゆえにどんなに悲惨が状況に置かれようとも、事件のネタとして面白おかしく記事にするだけで、子どもの貧困には、日経新聞もちろん朝日新聞にとっても無関心でいるのは、当然というべき態度といえそうです。

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【2011/01/05 04:08】 | 政治問題
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目を向けねばならない問題
ゆうこ
春霞さん
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 「子ども貧困」、中日新聞でも元旦から連載始まっており、考えさせられます。なんと苦しい状況であることでしょう。胸が痛みます。本日は「医学部へ進学したい」という記事で、貧困のため、国立大学しかダメ、受験も一回だけ、といった窮状を伝えていました。痛みを経たからこその高い志。
 司法修習生や若手弁護士の借金の問題もそうですが、裕福で痛み知らずの(子どもの頃からお受験で私立へ行った)ガキばかりが医者になり、法曹になり、国会議員になったら、この国はどうなりますか。邦夫のように「(宮崎勤死刑囚)こんなやつ、生かしてたまるかと思う。(任期中の死刑執行数)考えてみれば少なかったと反省している。30~40人はしなくてはならなかったと反省している」などと無茶苦茶な法相が乱造されるでしょう。
 大手メディアも悪質、劣化ぶりも極まりました。
 マザーテレサは日本を「貧しい国」と言いました。「派遣」という言葉が誕生する以前です。日本人の心の貧しさにマザーは気づいていたのです。
 ただ、いま子育ての最中にある20代、30代の人たちを育てたのは私ども戦後生まれ世代です。どこが間違っていたのだろうと振り返らずにはいられません。

はじめまして
さる太郎 改め 三重太郎
はじめまして 
「こども貧国」で検索し、こちらに辿りつきました
私は中日新聞でこちらの連載を読み、切り抜いていつかブログ記事にしようと思っていました
誠に勝手でありますが、コピペして 私のブログに転載しようと思っています
どうか許可を下さい
よろしくお願いします
私のブログ  http://ameblo.jp/nobitapa/
私の関連記事です
「子ども貧国」からの脱出~ そのために今私ができること
  http://ameblo.jp/nobitapa/entry-10764782463.html

転載することを許可してください よろしくお願いします


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目を向けねばならない問題
春霞さん
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 「子ども貧困」、中日新聞でも元旦から連載始まっており、考えさせられます。なんと苦しい状況であることでしょう。胸が痛みます。本日は「医学部へ進学したい」という記事で、貧困のため、国立大学しかダメ、受験も一回だけ、といった窮状を伝えていました。痛みを経たからこその高い志。
 司法修習生や若手弁護士の借金の問題もそうですが、裕福で痛み知らずの(子どもの頃からお受験で私立へ行った)ガキばかりが医者になり、法曹になり、国会議員になったら、この国はどうなりますか。邦夫のように「(宮崎勤死刑囚)こんなやつ、生かしてたまるかと思う。(任期中の死刑執行数)考えてみれば少なかったと反省している。30~40人はしなくてはならなかったと反省している」などと無茶苦茶な法相が乱造されるでしょう。
 大手メディアも悪質、劣化ぶりも極まりました。
 マザーテレサは日本を「貧しい国」と言いました。「派遣」という言葉が誕生する以前です。日本人の心の貧しさにマザーは気づいていたのです。
 ただ、いま子育ての最中にある20代、30代の人たちを育てたのは私ども戦後生まれ世代です。どこが間違っていたのだろうと振り返らずにはいられません。
2011/01/06(Thu) 12:09 | URL  | ゆうこ #mQop/nM.[ 編集]
はじめまして
はじめまして 
「こども貧国」で検索し、こちらに辿りつきました
私は中日新聞でこちらの連載を読み、切り抜いていつかブログ記事にしようと思っていました
誠に勝手でありますが、コピペして 私のブログに転載しようと思っています
どうか許可を下さい
よろしくお願いします
私のブログ  http://ameblo.jp/nobitapa/
私の関連記事です
「子ども貧国」からの脱出~ そのために今私ができること
  http://ameblo.jp/nobitapa/entry-10764782463.html

転載することを許可してください よろしくお願いします
2011/01/12(Wed) 01:44 | URL  | さる太郎 改め 三重太郎 #-[ 編集]
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2011/01/13(Thu) 00:19:52 |  村野瀬玲奈の秘書課広報室
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