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「子ども貧国(1)~東京新聞平成23年1月1日連載開始(【2011/01/05 04:08】)」の続きを紹介します。



1.東京新聞平成23年1月4日付朝刊31面「子ども貧国(3) 第1部 未来が泣いている」

「母に働かされているの」 救いの紙切れ

 中学三年のミキの告白は、養護教諭の田中明子(49)にとって衝撃だった。「私、母親に働かされているの」。5月下旬の6時間目、保健室でミキの目に涙が浮かんでいた。

 「金髪に、ひざ上丈のスカート」。4月に赴任したばかりの田中にとって、ミキは問題行動の目立つ不良少女の一人にすぎなかった。

 保健室のソファで悪態ばかりついていた「生意気そうな自分勝手な女の子」が泣いている。「生みの親はいるけど、育ての親はおらん」。途切れ途切れに話すミキを、田中は抱き締めることしかできなかった。

 ミキは母子家庭で育った。3歳の時、両親が離婚。ミキを連れて家を出た母はやがて水商売を始めた。

 収入は常に不安定だった。ミキが小学五年になると、母は家に金を入れるよう言いつけた。「母さんが怖かった」。ミキは近くのおばちゃんに頼んで内職仕事を始めた。月2、3万円の収入に母は満足しなかった。中学に入学してからは新聞配達を二つの店で掛け持つようになった。

 母親に取り上げられない“臨時収入”を得ようと、はやりのルーズソックスを万引きしては、格安で友だちに売ったこともある。その「不良仲間」たちもミキの生活苦のことは知らなかった。

 「本当のことを言ったら、どん引きされる。友だちにだって話せない」。貧乏は、誰にも話せない悩み。孤独だった。

 疲れ果てた心身には保健室のソファが最高の寝床。だが、田中が赴任した時、校長から聞かされたのは「保健室が不良のたまり場になっている」のひと言だけ。「教室には行きたくない」。ささくれだったミキの言葉に込められた意味を、読み取れずにいた。

 「彼女は何かを抱えている」。田中の疑問を解くかぎは2ヶ月後、突然、訪れた。いつものようにふいに保健室に現れたミキは、母親に働かされていると涙ながらにうち明けた。「貧困でそこまで悩んでいる子がいるなんて、思いもよらなかった」と田中は言う。

 告白から1ヶ月後、ミキは田中の勧めでスクールカウンセラーとの面談に応じた。面談を終えたミキに田中は児童相談所の連絡先を書いたメモを手渡した。「あなたの意思を尊重したい」

 ミキの通報をきっかけに児童相談所の介入が始まり、ミキは母の元を去った。

 なぜ、あの時、告白できたのか。本当の理由はミキ本人にもわからない。「苦しくて。たぶん誰かに聞いてほしかったんだと思う」

 22歳になったミキは愛知県内の大学で児童福祉を学んでいる。「過去の自分と向き合いたかった」。講義や専門書に出てくる心に傷を負った子どもの症例が自分と重なる。「学べば学ぶほど自分が欠陥商品のように思えてくる」

 不安を埋めてくれるのが、アルバイトで始めた障害者の支援活動だ。働く親に代わって障害児に寄り添う。子どもの笑顔に癒され、親の感謝の言葉に自信をもらう。「頼って、頼られている」(文中仮名)」



家族背景に目配り必要

 子どもの問題行動には貧困が影を落とすが、高度経済成長を経た現代日本で、両者をつなぐ視点は薄まるばかりだ。法政大大学院の岩田美香教授(教育福祉論)は、1977年の「犯罪白書」が「少年非行の普遍化」を指摘して以来、原因を情緒発達など個人の資質に求めがちだと指摘する。貧困家庭の育児について「金銭的困窮だけでなく、親の時間的な余裕のなさが家族の孤立を招く」点に着目。病気や飲酒問題を抱える親もおり、子の世話が不十分になったり、親子関係がこじれたりしやすいことから、学校がソーシャルワーカーの活用などで「家族の背景にまで目配りする」ことが必要だと訴える。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この記事における家庭は、母子家庭ですが、母は収入を得る手段として「水商売を始め」ています。「収入は常に不安定だった」点にあることからすると、必ずしも家庭自体が常に貧困状態だったとはいえないようです。問題なのはこの子ども、中学三年生のミキさん自体が貧困であることです。すなわち、母親が子どもに労働を強いており、しかもその収入を巻き上げている(ピンハネしている)ために子ども自身貧困に陥っているのです。

こうしたピンハネは、貧困ビジネスを行う団体のみならず、他の組織――会社のみならず、法律事務所でも――あることですが、親が自分の子どもに対して行っているわけです。

大人でもこうしたピンハネは相談できなかったりします。ましてや親からなされて、貧困に陥っているのであれば、誰にも相談できないでしょう。いまやあからさまな貧乏状態は、いじめの対象になってしまうのですから。

「「本当のことを言ったら、どん引きされる。友だちにだって話せない」。貧乏は、誰にも話せない悩み。孤独だった。」


この子どもはまだ中学生だったのですから、本来、中学校側が相談相手になっていてもよかったのですが、やはりというべきか、この中学校は見捨てていたのです。

「疲れ果てた心身には保健室のソファが最高の寝床。だが、田中が赴任した時、校長から聞かされたのは「保健室が不良のたまり場になっている」のひと言だけ。「教室には行きたくない」。ささくれだったミキの言葉に込められた意味を、読み取れずにいた。」


校長による「保健室が不良のたまり場になっている」のひと言は、無責任な校長の姿をそのものです。早く貧困から脱する機会を得られなかったのです。


(2) この記事におけるこの子どもへの救済手段は、養護教諭への相談、そして収入を巻き上げていた母親から脱することでした。

「「彼女は何かを抱えている」。田中の疑問を解くかぎは2ヶ月後、突然、訪れた。いつものようにふいに保健室に現れたミキは、母親に働かされていると涙ながらにうち明けた。「貧困でそこまで悩んでいる子がいるなんて、思いもよらなかった」と田中は言う。
 告白から1ヶ月後、ミキは田中の勧めでスクールカウンセラーとの面談に応じた。面談を終えたミキに田中は児童相談所の連絡先を書いたメモを手渡した。「あなたの意思を尊重したい」
 ミキの通報をきっかけに児童相談所の介入が始まり、ミキは母の元を去った。」


この子どもへの救済手段は、養護教諭への相談が最初でした。しかし、昔であれば相談相手は、近所の隣人、親類など色々いたものでした。ところが、学校はもちろん、地域社会の結び付きが希薄化した点も、貧困から抜け出せなかった要因の一つといえそうです。



2.東京新聞平成23年1月5日付朝刊27面「子ども貧国(4) 第1部 未来が泣いている」

別離父子つなぐDS 「相棒、元気かな」

 パパ(45)とはもう3週間以上、会っていない。「おれの相棒、元気かな」。ソウくん(8つ)が気遣う。「相棒」とは、子どもに人気の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」のゲームに登場するキャラクター。

 ソウくんのDSは普段、パパの家に置いてある。だから、「相棒」に会えるのはパパと一緒の時だけ。「おれがいないときは、パパが代わりに遊んでる」。二人の共通の話題は、ゲームだ。

 ソウくんが二つ違いの姉と名古屋市近郊の児童養護施設で暮らすようになって、もう6年になる。2歳のとき、母親が家を出ていった。トラック運転手だった父親は当初、ベビーシッターの助けを借りて懸命に仕事と育児の両立を図った。

 「(ベビーシッターの)利用料で週2、3万円を請求された。これは続かんなと思った」と、父親は言葉少なに振り返る。仕事中、幼い子どもたちに家で留守番をさせるわけにはいかない。やむなく、父子は離ればなれに暮らし始めた。

 姉弟が預けられた施設は、親の養育困難や虐待などの理由で、児童相談所に一時保護された子どもたちを受け入れる場所だ。家庭復帰を目指しながら、子どもたちが集団生活を送っている。

 「かつては親の失踪で入所に至る事例が多かった。今は虐待、離婚など入所の理由はさまざま」と施設長(56)。その根っこにあるのは今も昔も変わらない。「貧困だ」と、職員らは口をそろえる。

 だが、子どもを取り巻く「貧困」は、かつてとは様相を異にしている。DSやiPod(アイポッド)などの最先端の電子機器は“必需品”。継ぎはぎだらけの服のかわいそうな子どもたちは、過去の話だ。「公園で遊んでいても、誰も貧しいと気付かない」。中堅職員の本田勇二(29)は言う。

 たまの外泊から施設に戻った子どもたちが最新版のゲームを手にしている。そんな光景は本田の中では日常だ。「DSが親子の関係をかろうじてつなぎ留めている」

 昨年暮れのクリスマス、ソウくんは朝から窓の外を眺めていた。3週間ぶりの外泊。父親はなかなか迎えに現れなかった。

 ソウくんに付き添う本田には気掛かりがあった。数ヶ月前、父親は金銭的に窮地に立たされた。トラック運転手から事務職に異動を命じられ、ピーク時に30万円ほどあったという毎月の手取りは十数万円に落ち込んだ。「一緒に暮らせるよう頑張る」。父親の言葉に、かつての力強さは失われていた。

 パパの窮状は幼いソウくんにも伝わっていた。いつもふりかけご飯ばっかり食べて、前より疲れて見えるパパ。「おれがDSしてる時も、布団で寝てばっかり」

 クリスマスの一日が終わろうとしていた。「お客さまのご都合により通話ができなくなっております…」。本田の鳴らした父親の携帯電話は、料金滞納を告げる無機質な児童応答を繰り返すだけだった。(文中仮名)」



貧相な貧困観

 国立社会保障・人口問題研究所部長の阿部彩氏は著書「子どもの貧困」で、日本人の「貧相な貧困観」を指摘する。子どもにとっての必需品を調査した先進国間のデータの比較では、英国では84%がおもちゃを必需品と回答したのに対して日本では12.4%、自転車は英国が55%、日本が20.9%など、いずれの項目でも大きな差があった。

 阿部氏は日本人の心理の根底にある「総中流」や「貧しくても幸せな家庭」といった「神話」が、子どもの貧困問題に対する日本人の鈍感さにつながっているとみる。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この記事における家庭が貧困に陥った原因は、父子家庭となり、その父親に対して「配転」がなされた結果、突如、著しく減給となったことです。

「数ヶ月前、父親は金銭的に窮地に立たされた。トラック運転手から事務職に異動を命じられ、ピーク時に30万円ほどあったという毎月の手取りは十数万円に落ち込んだ。「一緒に暮らせるよう頑張る」。父親の言葉に、かつての力強さは失われていた。
 パパの窮状は幼いソウくんにも伝わっていた。いつもふりかけご飯ばっかり食べて、前より疲れて見えるパパ。「おれがDSしてる時も、布団で寝てばっかり」


「配転」とは、職務内容や勤務場所の変更(短期間の出張を除く)のことをいいます(水町勇一郎・労働法(第3版)152頁)。「配転」の適法性とともに、こうした職務の変化に伴う減給措置はあり得ることですが、その適法性も問題となり得ます(水町・労働法152・253頁参照)。

この父子家庭での父親は、<1>トラック運転手だったのですがそれが事務職となったわけですから、職種を限定する合意があったのではないか、職種を限定する合意があったのであれば、配転命令は認められないのではないか、<2>配転命令が認められるとしても、父子家庭という事情を考慮すれば、権利濫用に当たる可能性もあるのではないか(労働契約法3条3項参照)が考えられます。さらに、<3>「ピーク時に30万円ほどあったという毎月の手取りは十数万円に落ち込んだ」というほど、賃金減額が大きいので、このように労働者の被る不利益が大きい場合には、職務の変化に伴う減給は違法ではないか、も問題となり得るのです。

もちろん、トラック輸送の需要の落ち込みから、昔は「ピーク時に30万円」であっても今はもっと少なくなっている可能性は十分にあり得ます。ですから、配転がなくても給料はかなり少なかった可能性もあることは確かです。また、「変更解約告知」(労働条件の変更を申し入れ、これに応じない場合には労働契約を解約する旨の意思表示)があり、労働者側が配転を承諾したのかもしれません(水町・労働法186頁参照)。

「本田の鳴らした父親の携帯電話は、料金滞納を告げる無機質な児童応答を繰り返すだけだった」ということですから、もしかしたら、この父親はすでに会社から解雇されている可能性さえもあります。このように一概には言えないにしても、不当な配転・不当な減給が貧困へともたらした可能性があることは確かです。労働法による法規制はあるため、本来は貧困にならずに済んだかもしれないのですが、労働法制が画餅(がべい)に帰しています。



(2) この記事におけるこの子どもへの救済手段は……。

「ソウくんが二つ違いの姉と名古屋市近郊の児童養護施設で暮らすようになって、もう6年になる」ということですから、児童養護施設は少しは救済手段となっているようです。ただ、クリスマスの日、どうやら父親が迎えにこなかったのですから、父親は行方不明になっているのかもしれません。となれば、とても救済が図られているとはいえません。

ソウくんは8歳、その姉は10歳ですから、二人とも小学生です。両親ともいない状態では、小学生、そしてその後の高校といった教育はどうなるのか、生活はどうしていくのか――。その境遇に思いを致せば、誰しもが心配になる家族といえます。

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2.東京新聞平成23年1月5日付朝刊27面「子ども貧国(4) 第1部 未来が泣いている」

別離父子つなぐDS 「相棒、元気かな」

 パパ(45)とはもう3週間以上、会っていない。「おれの相棒、元気かな」。ソウくん(8つ)が気遣う。「相棒」とは、子どもに人気の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」のゲームに登場するキャラクター。

 ソウくんのDSは普段、パパの家に置いてある。だから、「相棒」に会えるのはパパと一緒の時だけ。「おれがいないときは、パパが代わりに遊んでる」。二人の共通の話題は、ゲームだ。

 ソウくんが二つ違いの姉と名古屋市近郊の児童養護施設で暮らすようになって、もう6年になる。2歳のとき、母親が家を出ていった。トラック運転手だった父親は当初、ベビーシッターの助けを借りて懸命に仕事と育児の両立を図った。

 「(ベビーシッターの)利用料で週2、3万円を請求された。これは続かんなと思った」と、父親は言葉少なに振り返る。仕事中、幼い子どもたちに家で留守番をさせるわけにはいかない。やむなく、父子は離ればなれに暮らし始めた。

 姉弟が預けられた施設は、親の養育困難や虐待などの理由で、児童相談所に一時保護された子どもたちを受け入れる場所だ。家庭復帰を目指しながら、子どもたちが集団生活を送っている。

 「かつては親の失踪で入所に至る事例が多かった。今は虐待、離婚など入所の理由はさまざま」と施設長(56)。その根っこにあるのは今も昔も変わらない。「貧困だ」と、職員らは口をそろえる。

 だが、子どもを取り巻く「貧困」は、かつてとは様相を異にしている。DSやiPod(アイポッド)などの最先端の電子機器は“必需品”。継ぎはぎだらけの服のかわいそうな子どもたちは、過去の話だ。「公園で遊んでいても、誰も貧しいと気付かない」。中堅職員の本田勇二(29)は言う。

 たまの外泊から施設に戻った子どもたちが最新版のゲームを手にしている。そんな光景は本田の中では日常だ。「DSが親子の関係をかろうじてつなぎ留めている」

 昨年暮れのクリスマス、ソウくんは朝から窓の外を眺めていた。3週間ぶりの外泊。父親はなかなか迎えに現れなかった。

 ソウくんに付き添う本田には気掛かりがあった。数ヶ月前、父親は金銭的に窮地に立たされた。トラック運転手から事務職に異動を命じられ、ピーク時に30万円ほどあったという毎月の手取りは十数万円に落ち込んだ。「一緒に暮らせるよう頑張る」。父親の言葉に、かつての力強さは失われていた。

 パパの窮状は幼いソウくんにも伝わっていた。いつもふりかけご飯ばっかり食べて、前より疲れて見えるパパ。「おれがDSしてる時も、布団で寝てばっかり」

 クリスマスの一日が終わろうとしていた。「お客さまのご都合により通話ができなくなっております…」。本田の鳴らした父親の携帯電話は、料金滞納を告げる無機質な児童応答を繰り返すだけだった。(文中仮名)」



貧相な貧困観

 国立社会保障・人口問題研究所部長の阿部彩氏は著書「子どもの貧困」で、日本人の「貧相な貧困観」を指摘する。子どもにとっての必需品を調査した先進国間のデータの比較では、英国では84%がおもちゃを必需品と回答したのに対して日本では12.4%、自転車は英国が55%、日本が20.9%など、いずれの項目でも大きな差があった。

 阿部氏は日本人の心理の根底にある「総中流」や「貧しくても幸せな家庭」といった「神話」が、子どもの貧困問題に対する日本人の鈍感さにつながっているとみる。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この記事における家庭が貧困に陥った原因は、父子家庭となり、その父親に対して「配転」がなされた結果、突如、著しく減給となったことです。

「数ヶ月前、父親は金銭的に窮地に立たされた。トラック運転手から事務職に異動を命じられ、ピーク時に30万円ほどあったという毎月の手取りは十数万円に落ち込んだ。「一緒に暮らせるよう頑張る」。父親の言葉に、かつての力強さは失われていた。
 パパの窮状は幼いソウくんにも伝わっていた。いつもふりかけご飯ばっかり食べて、前より疲れて見えるパパ。「おれがDSしてる時も、布団で寝てばっかり」


「配転」とは、職務内容や勤務場所の変更(短期間の出張を除く)のことをいいます(水町勇一郎・労働法(第3版)152頁)。「配転」の適法性とともに、こうした職務の変化に伴う減給措置はあり得ることですが、その適法性も問題となり得ます(水町・労働法152・253頁参照)。

この父子家庭での父親は、<1>トラック運転手だったのですがそれが事務職となったわけですから、職種を限定する合意があったのではないか、職種を限定する合意があったのであれば、配転命令は認められないのではないか、<2>配転命令が認められるとしても、父子家庭という事情を考慮すれば、権利濫用に当たる可能性もあるのではないか(労働契約法3条3項参照)が考えられます。さらに、<3>「ピーク時に30万円ほどあったという毎月の手取りは十数万円に落ち込んだ」というほど、賃金減額が大きいので、このように労働者の被る不利益が大きい場合には、職務の変化に伴う減給は違法ではないか、も問題となり得るのです。

もちろん、トラック輸送の需要の落ち込みから、昔は「ピーク時に30万円」であっても今はもっと少なくなっている可能性は十分にあり得ます。ですから、配転がなくても給料はかなり少なかった可能性もあることは確かです。また、「変更解約告知」(労働条件の変更を申し入れ、これに応じない場合には労働契約を解約する旨の意思表示)があり、労働者側が配転を承諾したのかもしれません(水町・労働法186頁参照)。

「本田の鳴らした父親の携帯電話は、料金滞納を告げる無機質な児童応答を繰り返すだけだった」ということですから、もしかしたら、この父親はすでに会社から解雇されている可能性さえもあります。このように一概には言えないにしても、不当な配転・不当な減給が貧困へともたらした可能性があることは確かです。労働法による法規制はあるため、本来は貧困にならずに済んだかもしれないのですが、労働法制が画餅(がべい)に帰しています。



(2) この記事におけるこの子どもへの救済手段は……。

「ソウくんが二つ違いの姉と名古屋市近郊の児童養護施設で暮らすようになって、もう6年になる」ということですから、児童養護施設は少しは救済手段となっているようです。ただ、クリスマスの日、どうやら父親が迎えにこなかったのですから、父親は行方不明になっているのかもしれません。となれば、とても救済が図られているとはいえません。

ソウくんは8歳、その姉は10歳ですから、二人とも小学生です。両親ともいない状態では、小学生、そしてその後の高校といった教育はどうなるのか、生活はどうしていくのか――。その境遇に思いを致せば、誰しもが心配になる家族といえます。

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【2011/01/06 22:42】 | 政治問題
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