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「子ども貧国(2)~東京新聞平成23年1月4・5日付掲載分」(【2011/01/06 22:42】)の続きを紹介します。



1.東京新聞平成23年1月6日付朝刊24面「子ども貧国(5) 第1部 未来が泣いている」

国立受験費すら苦慮 「夢への借金」

 岐阜県内の高校に通う三年の美香さん(18)の父親は、中学生のころ、突然、いなくなった。

 関東地方の出稼ぎ先から仕送りがなくなった。家賃も払えず、美香さんと妹2人の母子4人は路頭に迷いそうになった。

 そこで手を差し伸べてくれたのが「あの人」だった。お母さんの会社の同僚。「面倒みてやるよ」。やさしい言葉につられ、お母さんは再婚し、美香さんたちはあの人のマンションに転がり込んだ。

 そこからが大変だった。「おまえはだめだ、おまえはだめだ」。お母さんにあの人は何時間も怒鳴り続けた。

 耳をふさいで勉強した。「もう終わったかな」と手を離しても、まだ続いていた。「今は、勉強しよう。集中しよう」。そう言い聞かせた。

 「もう、やめて」。半年が過ぎたある日、美香さんが叫んだ。母子は再び、家を出た。

 行き場所のない母子を保護し、自立支援する母子生活支援施設へ、2年間だけ身を寄せた。

 美香さんは今、大学受験の真っただ中にいる。志望は国立大学の医学部。将来は顕微鏡で細胞をチェックし、病気を探る検査技師になりたい。

 中学二年の入所時、何度も続いた転校で、学校の勉強が分からなくなった。大好きだった数学でも最低点を取った。悔しかった。

 「勉強ができないと大学に行って就職できない。これから家族を支えるのは私なのに」

 妹2人と3人で六畳部屋を分け合いながら、高校受験を前に夜中まで勉強した。職員にも勉強を教えてもらった。そのおかげで、県内屈指の進学校に進めた。

 同級生はみな、毎日のように塾に行く。美香さんは、三年の夏休みもファストフード店へアルバイトに行った。「少しでも進学資金をためたかった」。だけど、教材費や生活費にすべて消えてしまった。

 希望する大学は、自宅から通えない。家賃、生活費、授業料…。契約社員のお母さんの月給は13万円。とても進学資金など出せない。働きながら短大を卒業したお母さんも「どれくらいかかるか想像つかない」と言う。

 貸し付け型の奨学金はすでに申し込んだ。だが、受験に行くお金さえもひねり出すのが難しいのだ。ホテル代と交通費で3万円ぐらい。自立支援する施設の職員は「他にも受けたいところがあるだろうけど、経済的に一校しか受験できない。入学前にかかる費用を支援する制度はほとんどない」と指摘する。

 「はあ」。公営住宅の一室で、お母さんがため息をついた。最近、頻繁に一人で施設を訪れる。当面のお金のやりくりを職員に相談しているのだ。

 お母さんは、美香さんに「大丈夫だから、好きなようにしなさい」と言ってくれる。でも、好きなようにできないことは、美香さんが一番よく分かっている。

 「どうしても国立。私立には行けない。浪人なんて考えられない」

 一度しかないチャンスの日が、近づいている。(文中仮名)」



奨学金未返済 797億円

 貸し付け型奨学金を最大限利用すると、大学卒業時には数百万円の借金を背負うことになる。最近は不安定な雇用環境を反映し、社会人になっても奨学金が返せない若者が増えている。

 日本学生支援機構の2009年度の調査によると、返済が半年以上遅れている人の88%が年収300万円未満。延滞者の半分以上は無職やアルバイトだった。09年度時点で未返済額は過去最高とみられる797億円。返済猶予の申し出も相次いでいることを受け、機構は1月から、一定期間、減額して返還できる新制度を始める。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この家族、子どもが貧困に陥った理由は何でしょうか。

「岐阜県内の高校に通う三年の美香さん(18)の父親は、中学生のころ、突然、いなくなった。
 関東地方の出稼ぎ先から仕送りがなくなった。家賃も払えず、美香さんと妹2人の母子4人は路頭に迷いそうになった。
 そこで手を差し伸べてくれたのが「あの人」だった。お母さんの会社の同僚。「面倒みてやるよ」。やさしい言葉につられ、お母さんは再婚し、美香さんたちはあの人のマンションに転がり込んだ。
 そこからが大変だった。「おまえはだめだ、おまえはだめだ」。お母さんにあの人は何時間も怒鳴り続けた。
 耳をふさいで勉強した。「もう終わったかな」と手を離しても、まだ続いていた。「今は、勉強しよう。集中しよう」。そう言い聞かせた。
 「もう、やめて」。半年が過ぎたある日、美香さんが叫んだ。母子は再び、家を出た。
 行き場所のない母子を保護し、自立支援する母子生活支援施設へ、2年間だけ身を寄せた。」


父親の突然の失踪によって、事実上、母子家庭となり、その結果、「母子4人」が路頭に迷いそうになるほど貧困に陥ったのです。その後、母親に再婚相手が出てきたのですが、その母親の再婚相手がDVを行うような性格であったことから、精神的にも多大な苦痛を生じるようになったわけです。

母子家庭の母親は、なかなか、正社員に就職できていないケースが目につきます。この家族の場合も「契約社員のお母さんの月給は13万円」とあるので、やはり契約社員であり、しかも月給は13万円ということですから、これでは4人の生活を支えることはかなり難しいといえます。


(2) こうした家庭の子供は、金銭的な問題から、どうしても自分の人生を選ぶことが困難になってきます。そうした様子が記事に出ています。

 「美香さんは今、大学受験の真っただ中にいる。志望は国立大学の医学部。将来は顕微鏡で細胞をチェックし、病気を探る検査技師になりたい。(中略)
 同級生はみな、毎日のように塾に行く。美香さんは、三年の夏休みもファストフード店へアルバイトに行った。「少しでも進学資金をためたかった」。だけど、教材費や生活費にすべて消えてしまった。
 希望する大学は、自宅から通えない。家賃、生活費、授業料…。契約社員のお母さんの月給は13万円。とても進学資金など出せない。働きながら短大を卒業したお母さんも「どれくらいかかるか想像つかない」と言う。
 貸し付け型の奨学金はすでに申し込んだ。だが、受験に行くお金さえもひねり出すのが難しいのだ。ホテル代と交通費で3万円ぐらい。自立支援する施設の職員は「他にも受けたいところがあるだろうけど、経済的に一校しか受験できない。入学前にかかる費用を支援する制度はほとんどない」と指摘する。(中略)
 お母さんは、美香さんに「大丈夫だから、好きなようにしなさい」と言ってくれる。でも、好きなようにできないことは、美香さんが一番よく分かっている。」


この子どもが志望する学部は医学部です。医学部では、大学進学をする場合にもっとも学費がかかることは確かです。親が医師であるといった相当に裕福な家庭であれば学費に困ることはないのでしょうが、そうでなければ、相当に学費の確保に困ることは確かですし、貧困家庭ではなおさらといえます。

そうであっても、「入学前にかかる費用を支援する制度はほとんどない」点こそが問題です。

奨学金制度自体も充実しているとは言い難いことはあるにしても、奨学金は、基本的には入学した後の費用を賄うものです。しかし、入学前にかかる費用を支援する制度、そのうち特に受験前の費用を支援する制度は、―――色々探してみると分かりますが――、教育ローンしか見あたらないのです。

高額な受験料・受験校を受けるまでに必要な費用を出すことができなければ、入学する機会が与えられないことになり、そもそも奨学金を得る機会さえも与えられません。子どもが貧困に陥れば、結果として、大学進学が著しく制限されてしまうのです。日本の学費支援制度には、相当な不備があるように思えます。



2.東京新聞平成23年1月7日付朝刊26面「子ども貧国(6) 第1部 未来が泣いている」

無心できず借金苦 払わない「怪物」

 名古屋市内の定時制高校に通う四年生の勝(21)の母親は“怪物”だ。いわゆる「モンスターペアレント」と、学校側から分類されている。

 修学旅行の積み立てや教材費などの学校納入金を、昨年4月から一度も支払っていない。学校側は「定職にもついているし、払えるのに払わない」とみる。ひとり親の母親は看護師だ。

 修学旅行を目前に控えた11月。教室で勝の担当の佐藤公一教諭が切り出した。「このままじゃ修学旅行にも行けんし、卒業もできんぞ。お母さん、なんで払ってくれんのだ」

 「先生、母さんの病院に行くのやめてよ。おれが怒られる。お金はなんとかする」と勝は言った。

 入学以来、自分の学費はバイトで稼いできた。毎月数万円、母親にも渡していた。「家にお金をいれなさいと言われていたから」

 父親は知らない。母さんが姉と勝を育ててきた。「仕事が疲れる」と言っては、アルコールをあおるように飲む母さん。勝が救急車を呼んだこともあった。

 しつけのためだと、激しくたたかれたこともある。「母子家庭だから大変なんだ」。ずっとそう思ってきた。定時制高校へ進学する時も「母さんには負担をかけない」と心に決めていた。

 勝は最近、同じ定時制高校で出会った彼女と一緒に暮らし始めた。彼女の両親も学費を払わない“怪物”だ。

 「二人とも行く場所がなかった」。勝は少しうれしそうだ。まるで同志と出会ったかのよう。4万5千円の家賃は勝が払い、カーテンも冷蔵庫もない部屋で、一日一食、白米一合を分け合って暮らす。

 「先生、お金貸して」。勝は結局、佐藤教諭に助けを求めた。修学旅行代金と家賃の6万5千円を、3ヶ月の分割返済の約束で借りた。

 佐藤はほかの生徒にもお金を貸す。みな、親に頼まず、佐藤のところに来る。最近の親子を見て感じる。「親子のきずなが希薄になっているんじゃないか」。勝の母親にきちんと支払うよう談判したこともあるが、「私には関係ない」と一蹴された。

 勝は今春、卒業する。行き詰った生活からの「出口」を見つけるのは厳しい。過去最低水準の高校生の求人倍率。佐藤は「昼間の生徒にくる求人の10分の1しか、夜間にはこない」と嘆く。定時制の生徒だと告げただけで、会社訪問さえ断られることもある。

 分割返済の1回目の期限。佐藤は牛丼を手みやげに、部屋を訪ねた。勝はバイトをクビになっていた。レジの金が売り上げと合わないことが理由だった。

 「あのままいったら、犯罪者かホームレスになる」。佐藤は卒業後が心配でならない。金を貸す自分は、その場限りのセーフティーネットだ。

 「これからどうするんだ?」と佐藤。勝は、牛丼を一気に口にかき込みながら言った。「夢とか言ってる場合じゃないでしょ。とりあえずバイト、バイト」(文中仮名)」


給食費未納 26億円

 公立小中学校では給食費の未納問題が深刻化している。文部科学省によると、2009年度の給食費未納総額は約26億円(推計)とされ、前回の05年度調査より約4億円増えた。学校側が挙げた一番の理由は「保護者の責任感や規範意識の欠如」だ。

 就学援助と生活保護の家庭が7割にも達する名古屋市内の小学校で勤務経験のある事務職員は「計画的にお金を使うことが不得手だったり、気が回らなかったりというケースが多い。一概にモンスターペアレントと片付けるのは乱暴だ」と指摘する。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この子どもが貧困に陥った理由は何でしょうか。

「名古屋市内の定時制高校に通う四年生の勝(21)の母親は“怪物”だ。いわゆる「モンスターペアレント」と、学校側から分類されている。
 修学旅行の積み立てや教材費などの学校納入金を、昨年4月から一度も支払っていない。学校側は「定職にもついているし、払えるのに払わない」とみる。ひとり親の母親は看護師だ。
 修学旅行を目前に控えた11月。教室で勝の担当の佐藤公一教諭が切り出した。「このままじゃ修学旅行にも行けんし、卒業もできんぞ。お母さん、なんで払ってくれんのだ」
 「先生、母さんの病院に行くのやめてよ。おれが怒られる。お金はなんとかする」と勝は言った。
 入学以来、自分の学費はバイトで稼いできた。毎月数万円、母親にも渡していた。「家にお金をいれなさいと言われていたから」
 父親は知らない。母さんが姉と勝を育ててきた。「仕事が疲れる」と言っては、アルコールをあおるように飲む母さん勝が救急車を呼んだこともあった
 しつけのためだと、激しくたたかれたこともある。「母子家庭だから大変なんだ」。ずっとそう思ってきた。定時制高校へ進学する時も「母さんには負担をかけない」と心に決めていた。(中略)
 佐藤はほかの生徒にもお金を貸す。みな、親に頼まず、佐藤のところに来る。最近の親子を見て感じる。「親子のきずなが希薄になっているんじゃないか」。勝の母親にきちんと支払うよう談判したこともあるが、「私には関係ない」と一蹴された。 」


表面的には、「モンスターペアレント」ゆえ、子どもが自らバイトして学費を稼いでいるともいえます。しかし、母子家庭で家族を養う精神的負担が、そして、最も負担の大きい職業である「看護師」ゆえに、この母親がアルコールに逃げ道を作る結果をもたらしているように思われます。「勝が救急車を呼んだこともあった」というほどなのですから、相当重度のアルコール依存症と判断できそうです。

こうしたアルコール依存症ゆえに、この母親が、子どもの学費を払わないということだけでなく、養育放棄にまで結び付いているように思えます。このように母親がアルコール依存症になってしまい、精神的な問題を生じさせてしまうと、子ども自身が貧困に陥ってしまっているのです。

この子どもは21歳です。この年齢であれば、高校を卒業していてよい年齢なのですが、「名古屋市内の定時制高校に通う」とのことですから、何らかの事情――記事には何も書いていませんが――があったと思われます。定時制高校に通うまでの間にも、この子どもにはつらい出来事があったのではないでしょうか。



(2) この記事では、この子どもの将来への見通しがまるで立っていないことが分かります。

「勝は今春、卒業する。行き詰った生活からの「出口」を見つけるのは厳しい。過去最低水準の高校生の求人倍率。佐藤は「昼間の生徒にくる求人の10分の1しか、夜間にはこない」と嘆く。定時制の生徒だと告げただけで、会社訪問さえ断られることもある。
 分割返済の1回目の期限。佐藤は牛丼を手みやげに、部屋を訪ねた。勝はバイトをクビになっていた。レジの金が売り上げと合わないことが理由だった。
 「あのままいったら、犯罪者かホームレスになる」。佐藤は卒業後が心配でならない。金を貸す自分は、その場限りのセーフティーネットだ。」


この子どもがバイト先を解雇された理由は、レジの金を盗んだ疑いがあったからのようです。本当に盗んだのかどうかは分かりませんが、将来を目指す目的もなく、バイト先を転々とするようですと、それこそ「犯罪者かホームレス」になりかねません。

こうした子供、すでに21歳ですから本当は子供とはいえない年齢ですから、このまま過ごしていくようであれば、より厳しい現実が待っています。ただ、この子どもは、未成年の時に養育放棄をされ続けてきたために、こうした状況になっているのです。ですから、成人後であっても、未成年者と同様に、救いの手立てを行う必要があることは確かであるように思われます。




3.最後に、共同通信の記事を1つ。

(1) 共同通信(2011/01/25 17:45)

児童扶養手当、減額へ 物価下落で5年ぶり

 ひとり親家庭を支給対象とする児童扶養手当が、2011年度は物価下落に伴って0・3%程度減額される見通しとなった。減額は06年度以来5年ぶり。

 厚生労働省によると、子どもが1人で満額支給の場合、月額4万1720円から130円減り4万1590円となる。

 10年の全国消費者物価指数が判明した段階で、確定する。児童扶養手当は年金と同様、法律で物価と連動する決まり。10年の全国消費者物価指数は基準となる05年の約0・3%マイナスとなる見通し。

 児童扶養手当はもともと低所得の母子家庭のみが対象だったが、政権交代で支援を拡大するため法改正され、10年8月から父子家庭も支給対象となった。親1人子ども1人の場合、年間収入365万円未満で支給される。

 特別児童扶養手当、障害児福祉手当などほかの福祉手当も同じ比率で引き下げられる。

2011/01/25 17:45 【共同通信】」



(2) この記事によると、菅政権は、児童扶養手当の引下げだけでなく、特別児童扶養手当、障害児福祉手当などほかの福祉手当も、同様に引き下げるようです。そうすると、相当多くの国民に影響する措置といえます。

確かに、「物価の下落」が続いているという判断が一般的でしょう。「物価の下落」が続いているために、春闘において賃金の引き上げがなされていないとの報道もあるくらいです。しかし、野菜といった不可欠な食料品については、値段が下がっているという実感を持っている人はどれほどいるのでしょうか。

菅政権は、こうした社会的な弱者から真っ先に給付を減らしていくのですから、相当に悪辣です。

ちなみに、世界的に農産物の国際価格が高騰しており、日本にも影響しています。こうした報道があるなかで、菅政権は、福祉手当の値下げに踏み切るのですから、心の底から怒りを感じます。

農産物:国際価格が高騰、食卓を直撃…食料危機、再燃か

 農産物の国際価格が高騰し、世界の食卓を直撃し始めた。新興国の需要増大や異常気象、農産物市場への投機資金流入が要因で、国連食糧農業機関が算出する主要食料価格指数は昨年12月に過去最高を更新した。(中略)
 食料価格の高騰は日本にも波及してきている。キーコーヒーは3月から、家庭向けのコーヒー豆やレギュラーコーヒーなどの出荷価格を平均15%前後引き上げる。値上げは06年4月以来、約5年ぶり。
 日清オイリオとJ-オイルミルズは、大豆と菜種価格の高騰を受け、食用油の出荷価格を今月分から15%程度値上げした。両社とも家庭用が1キロあたり30円程度の値上げ。円高は輸入品の価格を低下させるが、「原料価格高騰の影響は、円高効果をはるかに上回る」(日清オイリオ)という。
 三井製糖も砂糖の出荷価格を昨年10月に1キロあたり6円、11月には同7円と立て続けに値上げした。」(毎日新聞 2011年1月17日



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2.東京新聞平成23年1月7日付朝刊26面「子ども貧国(6) 第1部 未来が泣いている」

無心できず借金苦 払わない「怪物」

 名古屋市内の定時制高校に通う四年生の勝(21)の母親は“怪物”だ。いわゆる「モンスターペアレント」と、学校側から分類されている。

 修学旅行の積み立てや教材費などの学校納入金を、昨年4月から一度も支払っていない。学校側は「定職にもついているし、払えるのに払わない」とみる。ひとり親の母親は看護師だ。

 修学旅行を目前に控えた11月。教室で勝の担当の佐藤公一教諭が切り出した。「このままじゃ修学旅行にも行けんし、卒業もできんぞ。お母さん、なんで払ってくれんのだ」

 「先生、母さんの病院に行くのやめてよ。おれが怒られる。お金はなんとかする」と勝は言った。

 入学以来、自分の学費はバイトで稼いできた。毎月数万円、母親にも渡していた。「家にお金をいれなさいと言われていたから」

 父親は知らない。母さんが姉と勝を育ててきた。「仕事が疲れる」と言っては、アルコールをあおるように飲む母さん。勝が救急車を呼んだこともあった。

 しつけのためだと、激しくたたかれたこともある。「母子家庭だから大変なんだ」。ずっとそう思ってきた。定時制高校へ進学する時も「母さんには負担をかけない」と心に決めていた。

 勝は最近、同じ定時制高校で出会った彼女と一緒に暮らし始めた。彼女の両親も学費を払わない“怪物”だ。

 「二人とも行く場所がなかった」。勝は少しうれしそうだ。まるで同志と出会ったかのよう。4万5千円の家賃は勝が払い、カーテンも冷蔵庫もない部屋で、一日一食、白米一合を分け合って暮らす。

 「先生、お金貸して」。勝は結局、佐藤教諭に助けを求めた。修学旅行代金と家賃の6万5千円を、3ヶ月の分割返済の約束で借りた。

 佐藤はほかの生徒にもお金を貸す。みな、親に頼まず、佐藤のところに来る。最近の親子を見て感じる。「親子のきずなが希薄になっているんじゃないか」。勝の母親にきちんと支払うよう談判したこともあるが、「私には関係ない」と一蹴された。

 勝は今春、卒業する。行き詰った生活からの「出口」を見つけるのは厳しい。過去最低水準の高校生の求人倍率。佐藤は「昼間の生徒にくる求人の10分の1しか、夜間にはこない」と嘆く。定時制の生徒だと告げただけで、会社訪問さえ断られることもある。

 分割返済の1回目の期限。佐藤は牛丼を手みやげに、部屋を訪ねた。勝はバイトをクビになっていた。レジの金が売り上げと合わないことが理由だった。

 「あのままいったら、犯罪者かホームレスになる」。佐藤は卒業後が心配でならない。金を貸す自分は、その場限りのセーフティーネットだ。

 「これからどうするんだ?」と佐藤。勝は、牛丼を一気に口にかき込みながら言った。「夢とか言ってる場合じゃないでしょ。とりあえずバイト、バイト」(文中仮名)」


給食費未納 26億円

 公立小中学校では給食費の未納問題が深刻化している。文部科学省によると、2009年度の給食費未納総額は約26億円(推計)とされ、前回の05年度調査より約4億円増えた。学校側が挙げた一番の理由は「保護者の責任感や規範意識の欠如」だ。

 就学援助と生活保護の家庭が7割にも達する名古屋市内の小学校で勤務経験のある事務職員は「計画的にお金を使うことが不得手だったり、気が回らなかったりというケースが多い。一概にモンスターペアレントと片付けるのは乱暴だ」と指摘する。」



「ご意見や体験談をお寄せください。連絡先は明記し、〒100 8505 (住所不要) 東京新聞社会部「子ども貧国」取材班へ。ファクスは03(3595)6919。メールアドレスはshakai@tokyo-np.co.jp」



(1) この子どもが貧困に陥った理由は何でしょうか。

「名古屋市内の定時制高校に通う四年生の勝(21)の母親は“怪物”だ。いわゆる「モンスターペアレント」と、学校側から分類されている。
 修学旅行の積み立てや教材費などの学校納入金を、昨年4月から一度も支払っていない。学校側は「定職にもついているし、払えるのに払わない」とみる。ひとり親の母親は看護師だ。
 修学旅行を目前に控えた11月。教室で勝の担当の佐藤公一教諭が切り出した。「このままじゃ修学旅行にも行けんし、卒業もできんぞ。お母さん、なんで払ってくれんのだ」
 「先生、母さんの病院に行くのやめてよ。おれが怒られる。お金はなんとかする」と勝は言った。
 入学以来、自分の学費はバイトで稼いできた。毎月数万円、母親にも渡していた。「家にお金をいれなさいと言われていたから」
 父親は知らない。母さんが姉と勝を育ててきた。「仕事が疲れる」と言っては、アルコールをあおるように飲む母さん勝が救急車を呼んだこともあった
 しつけのためだと、激しくたたかれたこともある。「母子家庭だから大変なんだ」。ずっとそう思ってきた。定時制高校へ進学する時も「母さんには負担をかけない」と心に決めていた。(中略)
 佐藤はほかの生徒にもお金を貸す。みな、親に頼まず、佐藤のところに来る。最近の親子を見て感じる。「親子のきずなが希薄になっているんじゃないか」。勝の母親にきちんと支払うよう談判したこともあるが、「私には関係ない」と一蹴された。 」


表面的には、「モンスターペアレント」ゆえ、子どもが自らバイトして学費を稼いでいるともいえます。しかし、母子家庭で家族を養う精神的負担が、そして、最も負担の大きい職業である「看護師」ゆえに、この母親がアルコールに逃げ道を作る結果をもたらしているように思われます。「勝が救急車を呼んだこともあった」というほどなのですから、相当重度のアルコール依存症と判断できそうです。

こうしたアルコール依存症ゆえに、この母親が、子どもの学費を払わないということだけでなく、養育放棄にまで結び付いているように思えます。このように母親がアルコール依存症になってしまい、精神的な問題を生じさせてしまうと、子ども自身が貧困に陥ってしまっているのです。

この子どもは21歳です。この年齢であれば、高校を卒業していてよい年齢なのですが、「名古屋市内の定時制高校に通う」とのことですから、何らかの事情――記事には何も書いていませんが――があったと思われます。定時制高校に通うまでの間にも、この子どもにはつらい出来事があったのではないでしょうか。



(2) この記事では、この子どもの将来への見通しがまるで立っていないことが分かります。

「勝は今春、卒業する。行き詰った生活からの「出口」を見つけるのは厳しい。過去最低水準の高校生の求人倍率。佐藤は「昼間の生徒にくる求人の10分の1しか、夜間にはこない」と嘆く。定時制の生徒だと告げただけで、会社訪問さえ断られることもある。
 分割返済の1回目の期限。佐藤は牛丼を手みやげに、部屋を訪ねた。勝はバイトをクビになっていた。レジの金が売り上げと合わないことが理由だった。
 「あのままいったら、犯罪者かホームレスになる」。佐藤は卒業後が心配でならない。金を貸す自分は、その場限りのセーフティーネットだ。」


この子どもがバイト先を解雇された理由は、レジの金を盗んだ疑いがあったからのようです。本当に盗んだのかどうかは分かりませんが、将来を目指す目的もなく、バイト先を転々とするようですと、それこそ「犯罪者かホームレス」になりかねません。

こうした子供、すでに21歳ですから本当は子供とはいえない年齢ですから、このまま過ごしていくようであれば、より厳しい現実が待っています。ただ、この子どもは、未成年の時に養育放棄をされ続けてきたために、こうした状況になっているのです。ですから、成人後であっても、未成年者と同様に、救いの手立てを行う必要があることは確かであるように思われます。




3.最後に、共同通信の記事を1つ。

(1) 共同通信(2011/01/25 17:45)

児童扶養手当、減額へ 物価下落で5年ぶり

 ひとり親家庭を支給対象とする児童扶養手当が、2011年度は物価下落に伴って0・3%程度減額される見通しとなった。減額は06年度以来5年ぶり。

 厚生労働省によると、子どもが1人で満額支給の場合、月額4万1720円から130円減り4万1590円となる。

 10年の全国消費者物価指数が判明した段階で、確定する。児童扶養手当は年金と同様、法律で物価と連動する決まり。10年の全国消費者物価指数は基準となる05年の約0・3%マイナスとなる見通し。

 児童扶養手当はもともと低所得の母子家庭のみが対象だったが、政権交代で支援を拡大するため法改正され、10年8月から父子家庭も支給対象となった。親1人子ども1人の場合、年間収入365万円未満で支給される。

 特別児童扶養手当、障害児福祉手当などほかの福祉手当も同じ比率で引き下げられる。

2011/01/25 17:45 【共同通信】」



(2) この記事によると、菅政権は、児童扶養手当の引下げだけでなく、特別児童扶養手当、障害児福祉手当などほかの福祉手当も、同様に引き下げるようです。そうすると、相当多くの国民に影響する措置といえます。

確かに、「物価の下落」が続いているという判断が一般的でしょう。「物価の下落」が続いているために、春闘において賃金の引き上げがなされていないとの報道もあるくらいです。しかし、野菜といった不可欠な食料品については、値段が下がっているという実感を持っている人はどれほどいるのでしょうか。

菅政権は、こうした社会的な弱者から真っ先に給付を減らしていくのですから、相当に悪辣です。

ちなみに、世界的に農産物の国際価格が高騰しており、日本にも影響しています。こうした報道があるなかで、菅政権は、福祉手当の値下げに踏み切るのですから、心の底から怒りを感じます。

農産物:国際価格が高騰、食卓を直撃…食料危機、再燃か

 農産物の国際価格が高騰し、世界の食卓を直撃し始めた。新興国の需要増大や異常気象、農産物市場への投機資金流入が要因で、国連食糧農業機関が算出する主要食料価格指数は昨年12月に過去最高を更新した。(中略)
 食料価格の高騰は日本にも波及してきている。キーコーヒーは3月から、家庭向けのコーヒー豆やレギュラーコーヒーなどの出荷価格を平均15%前後引き上げる。値上げは06年4月以来、約5年ぶり。
 日清オイリオとJ-オイルミルズは、大豆と菜種価格の高騰を受け、食用油の出荷価格を今月分から15%程度値上げした。両社とも家庭用が1キロあたり30円程度の値上げ。円高は輸入品の価格を低下させるが、「原料価格高騰の影響は、円高効果をはるかに上回る」(日清オイリオ)という。
 三井製糖も砂糖の出荷価格を昨年10月に1キロあたり6円、11月には同7円と立て続けに値上げした。」(毎日新聞 2011年1月17日



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【2011/01/27 00:19】 | 政治問題
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